医学部会長ごあいさつ

大平猛(おおだいら たけし)

東京大学 物性研究所 原田研 大平開発ユニット長
熊本大学 薬学部先端薬学 教授
杏林大学 消化器一般外科 客員教授

医学領域におけるマイクロバブル・ナノバブルの大きな可能性は、バブルに封入する気体をオゾンとした場合、感染性疾患に対して抗菌薬に対する耐性化を伴うこと無く治療を行うことができる点であると言えます。新世代の抗生物質の開発が行われる中、その開発速度を追い越す勢いで耐性菌による院内感染が発生しております。マイクロバブル・ナノバブルは化学的作用にて抗菌効果を発揮することなく、物理的作用にて効果を発揮するため、反復・長期に治療を続行することが可能です。難治性化膿性病変であっても反復治療にて治癒を期待できる可能性があります。また、世界に目を向けた場合、感染症が死因の上位を占める地域においてマイクロバブル・ナノバブル発生装置を使用すれば、現地にて治療を施行することも可能となるわけです。

開発・製造では、医学部会で取り扱うマイクロバブル・ナノバブルの特徴として滅菌環境が要求される、という他部会には無いハードルが存在します。この事はシステム開発に他部会と根本的に異なる機構を要する事になり、開発における機構の流用が難しいという課題が存在するわけです。このような状況にて消化管洗浄用として市販化第1号機が開発され薬事法を通過したことは、医学部会における大きな進展と考えられます。消化管、特に下部消化管である大腸の洗浄において効率的な洗浄が確認されております。大腸洗浄は手術前の洗浄の他、ベッド上安静を必要とする患者さまの消化管洗浄や人工肛門周辺および口側腸管洗浄など応用範囲は多岐に渡ります。

現在、市販化機器の消化管以外の臨床分野への適応範囲を拡大中です。近い将来、消化器科の消化管・実質臓器疾患を初めとして・体表外科・呼吸器科・婦人科・脳神経外科・耳鼻科・泌尿器科や救急医療における外傷洗浄など非常に多くの分野での利用が考えられます。

今後マイクロ・ナノバブルの封入空気の種類により様々な場面での使用が期待されます。学会の成果として多方面への適応事例を世界に発信できるよう、会員の皆様と共に本部会を発展させていけるよう尽力するつもりです。

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